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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
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2014年05月09日
ミラノウニカ展は昨年まではヨーロッパ企業だけに門戸が開かれていた展示会で、今年初めてヨーロッパ以外の国の出展も認めるという流れになり、ジャパンパビリオンが設けられ日本企業は今年初出展となります。

イタリアという国は、ウールを始めすべての素材が揃っているといわれており、リネンも例外ではありません。そんなヨーロッパのリネンの本場に小さな日本の機屋がリネン生地を売り込みに行くという流れ、どうなることでしょう。

リネンの超細番手素材を強みに日本のテイストを強く打ち出したいと考え、林与ジャパンプロジェクトで日本パビリオンの中でも布で日本らしさを醸し出したいと考えております。
2014年05月08日
今日はゴールデンウィーク明けの加工出しの第二段。加工工場に反物を持ち込む。ゴールデンウィーク明けのこの時期というのは、見本の時期というわけでもないので、加工工場さんとしては一番落ち着いている時期だろうか。私のイメージとしてはゴールデンウィーク明けくらいから来期の企画に入られるブランドなども多いと思う。

今年はPTJが5月21日、22日と例年よりも日程が遅い。今年のPTJというのはテキスタイル展の時期としては来春物を企画するには先染なんかだと間に合わないだろうと思える。後染やプリントなら来期に間に合うというようなタイミングだろう。というのも、6月終わりに企画検討が済んだとしても、先染で8月のお盆明けに着分生地が納まって洋服にして展示会が10月というのでは、11月から生産して12月末納期だと、産地のキャパも一杯でもうすでにぎりぎりの計画で、時間的な面で先染の新しいものなどクオリティから検討していくとかは難しい状況。

今年の弊社の企画はリネンの細番手素材にプリント柄を載せる形なので、版さえできあがているなら納期的には比較的クリアしやすいといえるが、リネンにプリントはふつうのものは簡単でも風合いなど考えていくと案外難しいので、その辺りもブランドさんにも理解いただきながら、これから風合いとプリントクオリティの兼ね合いでクリアしていかないとならないところとなる。

製品化するだけでなく製品化して洗ってみたりとか、通常は2年くらい掛けて、自分の中で、時々その生地を使ったアイテムと過ごしながら、生地の価値の位置づけをしてみたりする。私自身が手を抜いて突貫工事で作った生地に興味がないのは、生地をみると手を抜いたことが思い出されるからかもしれない。短時間で作っても製一杯までやりきった生地に対しての自己評価は高い。

生地なんてものの評価は、客観的にみたとしても時代とともに移り変わっているし、流行でブームになった生地というのはブームが去ると手を出したら駄目な一番候補となってしまう。そういうのとは違う自分自身の絶対的な価値でものを作り出していきたいと思う。
2014年05月07日
今日はゴールデンウィーク明け、午前中はお客様で午後一番に加工出し。この2年あとくらいにブームになるであろう一つのトレンドカラーをキーとしてプラス何色か織ってみた。織物というのは色を広げすぎると色の好き嫌いがあるので売れ残る確立が高くなる。自分の手元に残ってもよいなあと思える色だとそれは残ってもしかたのないこと。

林与の工場では多様性を持たすために織機の一台一台の規格を変えてあり、それというのは、一つの企画を完了するためにはいろいろな色を織り終えないといけないので、同じものの量産には適さない。一台の機械が一年に一回しか回らないこともある。売り上げとか考えるとそれは駄目な方法なのだけど、少人数でいろいろなことをやるためには、そういう方法が一番効率がよい。いろいろなお客さんのニーズに応えられる形だろうと思う。

2014年05月06日
昨日夜、近江上布プリント柄ストールの撮影を行いました。カメラモニタで、照明無しでは暗い感じがしたので、照明を使ったのが失敗で、18柄、全部取り終えてからコンピュータで画像を確認して失敗に気がつく。でも時間の問題もあって、近江上布プリント柄の素敵さはとりあえず伝わると思うのでご覧いただけたらと思います。

リボン、小梅格子、赤珠、深草、花豹柄、野良花、ジグザグ、幻想、モザイク、チェック、赤ウィンドペン、蛙紋、銀河、雪中花、モコモコ、銭花、五花格子、花氷、と私の頭の中のイメージとつなげて仮に作品を名づけてみました。

ほかに、ゴールデンアイリッシュリネンストールも撮影してみました。これが北アイルランドで、アイリッシュリネンの色の美しさで有名だったアンドリュースのリネンです。亜麻色のイメージがよく出ていると思います。現行のリネン150番手ストールも撮影を行いました。薄さ軽さが伝わるのではないでしょうか。

近江上布プリント柄ストールは、リネンの超細番手を織り上げたしっかりめの3シーズンタイプをベースにして、風合いを特別柔らかくコンフォートに仕上げましたので、一年中お使いいただけるような仕様です。
2014年05月05日
今日は、雨の降る子供の日、昨日のほうが、路地に出て遊んでいる子供や親御さんの風景も多かった。この連休で、田んぼもほとんど田植えが終わったみたいで、水絨毯の光景となった。

織機のビームに使うおもりを探していて、専用のものでは軽すぎて、それがトラクタの1個15kgほどのウェイトが丁度よく、オークションなどで出物を捜しているけども今の時期は必要な人のほうが多すぎて入手困難。

あとほしいのがプリンタで、もうすぐ展示会もあるので、林与のパンフレットそろそろ準備始めておかないとならない。プリンタなんかも紙やインクと同じくらいに消耗品じゃないのかと思うほどに壊れやすく買い替えが必要。昔は、プリンタというものに憧れを感じてよいのがほしいなあと思ったけど、今のプリンタにそれはない。

何倍も高くてもいいので手に入れて大事に使いたいなあと思えるものがあってもよいと思う。パナソニックのメイドインジャパン機種レッツノートSX2というノートパソコン、SX1の後も1年以上使っているが快適で、使う喜びがあるのがいい。使い古して使えなくなったときに、次も同じメーカーの新しいモデルにしようとなる。

会社の事務所では、70過ぎの母親がミシンを踏んでストールのネーム付け、70過ぎた人が仕事をするというのが特別に思えるかもしれないが、林与のおばあさんたちなんてみんな部屋でなんらかの仕事をしてきた。おじいさんにしてそうで、仕事を生きている限りつづけるというのは別に不幸なことじゃなく幸せなことだろうと思うが、次の世代を支えていく立場で続けていけばよいのだ。なかなか、それができないから引退させるということになるのだろう。
2014年05月04日
連休の二日目、すでに夏の暑さを感じる一日、糸の箱など運ぶと喉が渇く、ゆっくりと寝ていたい気分にもなるが、ゆっくりしてしまう癖がつくと、元の張り詰めた状態に戻ることはたぶん無理だろう。とくに年をとってくると張り詰めた状態をつくり上げることが難しいものだが、

他の人が講釈を垂れて難しくいっているような仕事も、自分が出来るようになってしまえば講釈を聞く必要ない。出来ないままに長い時間が経つくらいなら、本腰を入れて変えていくことも必要だろうと思う。

仕事なんて100点で何もかもが進むとは限らないから、上手にそれを乗り越えていくことが仕事みたいなもの。100点で何もかもが進むくらいなら、そんなのはどこでもできることに落ち着いているだけ、後々のために、120点を目指して、少し、うまくいかないくらいのところでものづくりするのがよいのではないかと考える。

うまくできるところはそれなりのノウハウをもって仕事をクリアしているだけのことだろうと思う。ある要素ができなければすべてのやったことが止まってしまう。織物をつくるときでも糸からして問題が潜んでいることが多いし、染めにしても色ごとに違う染料で対応するとか、加工にしても問題を解決するために工程を増やしたり、いろいろな問題をクリアしてようやく新しい布ができることがほとんど。

そういうのって普通のことだろうと思う。機屋として布を勧められるか勧められないかは、お客様のレベルによって違う。問題解決力の高いお客様だと少し難度の高いものでもお勧めできる。そこでお客様にしてもほかとは違うものづくりに到達できるということになろうかと思う。会社の中でも出来る人と出来ない人の差というものは大きく、問題解決能力のある人とない人とでは、出来ることの可能性というものは大きく違う。

人には同じだけのチャンスがあるだろうが、それを自分がどう生かすか生かさないか、というのと似ている。超えることのできるチャンスを超えていかなければ、もう次に同じチャンスがあるとしても次も超えてはいけないだろう。仕事をしていくうえで、チームとしての問題を乗り超えていく力は非常に大事だと思う。問題処理能力に関しても高い水準で動けるチームだと高いレベルのことを普通に出来る。そういうチームワークで動いているところが他には及ばないものづくりに到達できるのだろうと思う。
2014年05月03日
今日は祝日、休みの日というのは仕事の遅れを取り戻すのにありがたい。休みが多くなれば多くなるほど、その分休みの日に働かないとならないことも多くなる。仕事においてもやりたいことは一杯あるが、目の前のことに追われすぎていてできない。

小学生や中学生でもできそうなことが大人ができないということが多く、大人というものはどうしようもないところがあるものだ。年を重ねるということは普通にしていると退化していく可能性のほうが多いと思う。会社にしても、新しい人が入らなければ1年経つと1歳みんなが年を取る。業界にしても、新しい人が入ってこない限りは1年ごとに年をとってゆく。

不思議なもので、経験がいくら有っても増えても歳には勝てないもので、経験のない人ができることすらも歳をとってしまうと出来なくなる。だからこそ、若いうちにいろいろな経験を積んでおく必要があろうと思う。20代のときにできなかったことが30代になってできるようになるということはあまりない。それが難しいことでなくても、たとえば、機械の下にもぐって汚れる仕事ができるのかできないとか。
2014年05月01日
5月に入ったが、まだ、納期に追われる様ながら、もうすぐ、PTJ。申し込みをしたイタリアでのミラノウニカ展の説明会が翌日あるということで、一旦帰ってからまた翌日昼東京に向かう形になりそう。今年初めてヨーロッパ企業以外の国の企業に門戸が開かれるミラノウニカ展も、出展できるのかは出展審査次第の状況。今年でることが出来なくても来年再来年もチャンスはあるだろうと思うので長い眼でヨーロッパへの道は考えていきたい。

夕方、糸の染を10点ほど頼んだ。そろそろ見本用の染を頼む季節。見本用だけに染めると逆に無駄が多くなる。実は日本で足りないのは労働力。設備なんかは余っていても仕事のできる人が少ないので、その仕事が出来る人が少なくなっている原因が、ジャストインタイムなものづくりが一因であろう。小さな節約のために大きな犠牲が裏にあるというもの悲しい話である。

今日は機械屋さんが夜話しをしに来て下さって、久しぶりにお話をして、トーマスアンドリュース社のゴールデンアイリッシュリネン糸を使ったストールを一目ぼれしてくださった。いろいろなところで麻製品は見ておられるがそのストールを一瞬で揺るがないほどに気に入ってもらえるというのは御目が高いと思う、さすがである。奥さまにプレゼントしたいといわれる。
2014年04月30日
今日は月末、金融機関の担当の方が朝見えられて近況報告など。今年の計画などをお話していると、5本から6本の柱となるプロジェクトがあることに気がつく。ものづくりというのはものづくりに留めているとものづくりも広がらない。作ったものを流せるような環境を自分で整備していかないとものをつくっても作っただけに終わり、成功する話も失敗で終わる。

また、そいういうものを求めて下さるような人との出会いを持つことも大事で、ものづくりを評価してもらう部分なのでものづくりの一部だと思う。ブランドのデザイナーさんというのは、生地を見慣れておられるので特別な布には敏感な方が多い。

林与という会社は田舎の小さな会社だが商店街のお店よりはチャンスも多いだろうと思う。商店街のお店というのは地の利を生かして成り立たせているという要素が大きいので、商店街で買い物をするお客さんが減っていったときには商売が難しくなる。地の利を生かした商店街が地の利がなくなったときに、地の不利を抱えながら商売をすることになる、存続させるだけでも大変な状況である。
2014年04月29日
今日は、林与の昔の近江上布絣柄の反物を仕立てたものを親戚の方から譲り受けたという方がお知らせ下さいました。林与の与一おじいさんの頃の反物だろうと思います。林与の昔の近江上布の反物ががどういうところで販売をされていたのかということをお聞きできるチャンスかと思い、おば様から情報をいただけないかお願いしてさせていただきました。

私にとってはすごく嬉しいお話で、なぜ林与のものであるのかが分かったのかというと、仕立てられたものの一度も袖を通されないままの状態で、使わなかったハギレなども一緒に納品されていて、林与の文字の入った反物の端の部分も一緒に保管してあったと言うことで、林与のものに間違いのない一品で、弊社の残るハギレと照合すればどれかのハギレの柄に合うと思っております。
2014年04月28日
スーパーに行って、魚の売り場にいくと産地が書いてある。本当か嘘かはそれを扱うものの良心次第というところだといえる。まさに店の看板が命。海外産が日本産に化けても見抜ける人がどれだけいるのか。その場所で漁をしている人なら自分でその魚を食べているだろうから味の特性も分かるだろうけど一般のものには見極めは難しい。

布の世界では呉服の時代から偽物と本物が混在していたので、信用という看板が重んじられたのだろう。行商して遠くから歩いてきたということで、呉服価値以上に人柄を気に入られ商いに繋がるケースがほとんどだったのではないだろうか。商人の価値というのはそういうところにあり、物がすべてではないと思う。ものをつくるにしても同じで、出来上がったもの以上に自分が作ったというあたりが一番大事なところだったろう。

私自身がものを作るときには、売れ筋のものと顔が違ってもよいと思っている。それは、自分が作った証でもあるから、多少不細工になってしまっても、自分らしい顔があってその布を自分が気に入っていればよいと思う。

展示会で並べている布などは普通に見えても、自分自身が麻布としてちょっと面白いなと思う布なので、その微妙なところに共感いただける方との出会いを見つけるのが展示会だろうと思う。海外の展示会などでも、相手が話を聞いてくれるような方だと私が何を考えてその布を作ったのかとか、作る途中の細かな雑談まで布の一つ一つにストーリーがあったりする。納期とか値段とか品質とかじゃない、それが作り手がもつ確かさだろうと思う。自分でモノづくりをされている方にはそれが伝わりやすく大事にしてもらえる。ありがたいこと。ものづくりは、ものじゃない人の世界だといつも思い、また、確かさに繋がると思う。
2014年04月27日
近鉄奈良駅より徒歩15分の五風舎にて、梅崎由紀子氏ほか稲葉氏(木工)、大島氏(陶磁)の3氏による合同展が行われています。本日が最終日、夕方5時までとなりますが、お時間あられます皆様、足をお運び下さい。

会社の中では3月から4月中に納品予定でうごいていた反物があったのですが、別案件の短いものを挟んだので、織りきれなくてゴールデウィーク明けになりそう。織物の仕事も、小ロット短納期の対応ばかりだとマイナスばかりになるので、自社でリスクして仕事をまとめて自分自身で利益を上げていくようなことが必要。

エコという概念からしても、10の力を費やして1のものを生み出す形の繰り返しで10回生産するみたいなのは、理想的ではなく。ジャストインタイム的な在庫はゴミという発想自体を早く捨てないと、ほんとうのものを大事にするエコ社会の実現は難しいと思います。次々と新しい商品が出て1年前のモデルがゴミとなるようなのはいかがなものか。まだまだ、綺麗で走る車が、中古で年代が古いというだけで、ただ同然ところか、リサイクル料までとられてしまう国というのは日本くらいだろうと思うのです。

エコの概念は、ものを大事にするという概念ですが、ものを大事にするということは、そのものをつくった人のことを大事にすることに繋がります。日本は今はどちらかというと撚り無機質なお金を大事にする思想に向かってしまっています。たとえば、原発も本来はエコだからといいながらエコじゃないことがわかっても、儲かるからというエコとはまったく逆の本性が露呈してしまっては、最初のきれいごとはなんだったのということになります。エコという本来は人の心の豊かさで成り立つものが、餌にされてしまっているのが日本のエコの形。

テレビなんかでも使えるテレビがすべてゴミというのも、小さな個人の努力のエコを国の無機質なエコ意識が踏み潰すようなものだろうと思います。地デジ需要が、何十年も行ってきた国内でのテレビの生産の終焉だといわれています。一時の欲に駆られると、すべて培ってきたものを続けることすらできなくなる典型ではないでしょうか。地デジ化しても海外のように何十チャンネルものテレビ番組が流れるようなこともないなら昔のままでもよかったんじゃあないかと大きなもったいないを感じます。たとえば、結婚の時に買ったテレビなんかも捨てられずに思い出として使わなくてもしまっておいた方も多かったけども、地デジ化で、強制リサイクルされてしまった方も多いんじゃあないでしょうか。
2014年04月26日
先日、テキスタイルツリーの成田さんにPTJでは細番手リネンに近江上布プリント柄を展開する企画でいこうと考えていますというような近況報告をしたところ、リネンのプリント柄というものはあんまりないのでよいかも、というコメントをいただき。ピンと来たのが、リネンにプリントを載せるのは案外難しいということなのです。

綿やコットンリネンだと簡単で、リネン100%だと難しいというのも面白い話ではありますが、現実問題として私自身も取り組んでいる課題が含まれています。多くの方が取り組まれて失敗された結果が、リネンのプリントものが少ないという結果なのだろうと思います。特にアパレル向けではその問題は顕著化すると思えるところで、私自身も柄のセレクトなど大事だと思っています。

麻のプリントというのが昔から少なかった理由なども、その辺りではないかと思えたりするのです。なぜ、布に直接プリントせず、糸にプリントすることを選んだのか。単に技法を複雑化させるためだけではなく、近江上布、宮古上布、小父谷縮なんかも、布に直接プリントする問題に気がついていたので、絣になったのではなかろうかと思ったりもするのです。でも、ほぐしにならなかったのはと考えると、デザインとしての要素意外に、そこにはまた連続する縦糸ではなく連続しない横糸に捺染する理由があると思います。

近江上布で不思議なのは、黒ベースに白を抜いてあるタイプで、捺染で、どうしてあのように完璧に抜けているのかが、どのプリント工場の方に聞いてもハッキリとした答えが見つかっていないので、将来それは自分自身で再現を試みるべきだろうとおもっています。昔はよくあった白絣なんかも、今は出来ない技術であるといわれています。それと似たような要素が含まれているとしたら使える薬品などの問題も絡んでくるだろうとは思います。

林与の近江上布に使われている染料に関してのそれぞれの色の調合を書いてある帳面が残っているのです。私自身は染料には詳しくはないのですが、林与もお祖父さんのころには、家にボイラーがあって家の中で染色をしていましたので、麻を染めることに関してもプロ中のプロでした。あの形っていうのが、実際には何でもできるという環境なんだろうなあと惜しい気もするところです。
2014年04月25日
ある審査会で、ものづくりに徹して販売はほかの人に任せる方法を検討されては、というアドバイスをいただいた。私が考える商売のスタイルというのは、突き詰めていけば、自分が、魚を釣って魚を売るとか、おにぎりを握ってとか、野菜を育てて、道端で売るのも商売の基本だろうと思う。それではなかなか厳しいねえという答えが返ってくるかもしれないけれども。そういう基本の形を忘れてはいけないと思うところもある。

ファッションの世界においても、分業が進みすぎて、主流として、ゼロから自分でものを作り上げるということがもう何十年もされなくなっているような気がする。大体が、ほかの売れ筋のものや誰かが新しくつくったものを真似するという形。ものの作り手にしても自分のスタイルみたいなものがあっていいと思うのだがそれもなく規格や工程に従ってものづくり。その程度だと、仕事として働いている人のほうが、知識なんかにしても趣味の人に負けてしまうのではないだろうかと思える。

素人の方が自分のアイデアでつくったものを販売しているのをみて、業者が良いなと思われたのか真似をして同じものをつくって同じ売り場で販売してしまうというような話を聞いても、どこまで業者にクリエーションする力も後ろめたさもないかという話。素人に創作意欲やセンスがあっても業者には案外それがないというのが厳しい。

繊維の世界で生き残ろうとすると難しいなあと思うのは、3月末になると退社される方というのが多いことからもよく感じ取ることが出来る。私が織物の世界に入ってからの20年でも地場機屋さんの数も3分の1以下になっている。何十年の経験のある機屋でも廃業をされていくなか、新しい人が織物の業界に飛び込んで成り立たせることは昔以上に難しいことで、技術だけじゃなく、精神的な面でも、次の世代が前の世代よりも強くなければ商売として残すことは難しいだろうなあと思う。
2014年04月24日
展示会などで布好きの方にお会いできるかというと、即売会のほうが布好きの方に出会えるチャンスは高い。布を売る人と買う人とでは、布を買う人のほうが布好きな気がします。

布を売るお店を経営されている方で、布が溜まっていくのよ、とぼやいておられるのは布好きの証拠。布好きに取っては布を残してナンボなのだろうと、倉庫に一杯の布を持つ林与が思う。布のゼロの会社さんもあるけど、布が残って布一杯の織物会社が日本にあってもよいと思う。

一つ一つに作ったときの思い出があり、布を見ると、布を作ったときのことを思い出す。楽しいことばかりじゃなく、厳しくつらいことも多いけども、だからこそ大事に布を思えるもの。
2014年04月23日
今日はPTJの取材ということで午前中に業界紙の方が弊社まで来て下さいました。新しく、営業を中心に担当されている方ということで、業界の全般的なお話や麻織物に関してのお話をしました。ものづくりとうのは織物だけでなく、ほかの製造関連の業種とも共通している要素を抱えているので、業界紙の方にとっては大手の繊維メーカーさんの話が日本の繊維メーカーの情勢であるかのようになりがちですが、伝統的な流れを汲んでいる日本的な機屋スタイルのものづくりも業界紙には取り上げてもらって話題にしてもらいたいなあと思います。

午後からは大阪で卸業をされているお客様がお越し下さいました。ほかの素材のストールはされているものの、麻のものをとなるとなかなか作っているところが少ないということで、ご紹介でお越し下さいました。ストールも本格的に何百メートルとつくることはそれほど難しいことではないのですが、提案できるように常時もっているということが難しいものです。
2014年04月22日
今日はシャツ地が仕上がってくる日。その前の1週間ほどを張り詰めてやった仕事だけに、無事に生地が上がってくることを朝から祈る。夕方、加工工場にとりに行くと出来上がっていて出荷できる。表裏に注意して、柄物なので、さらに左右上下に注意して裁断下さいと注意書き。

表裏は書いてあるから注意するけど、柄物でも左右上下は気にしないという縫製工場も多い。昔、海外に出荷している生地がキズだというのでザンプが2mほど帰ってきて、海外縫製が日本の縫製を上回っているのではないかと思ったことがある。

チョークで小さなキズもチェックしてからの裁断で、ラミーの斑などもキズだという指摘には納得をできなかった部分もあるが、それ以上に、海外での縫製の水準の高さには驚くしかなかった。日本の量産の工場でそんなことをできるところは今は少ないだろう。
2014年04月21日
テキスタイルをデザインする人と織る人が別というのは、私の中ではややこしい話。織る人がデザインできることが一番大事だろうと思うが、それというのは昔の機屋のスタイルで、今はほとんど稀になってしまっている。

私自身が麻布を考えるときに、何を作りたいかで糸や織や染や加工を考えていくケースと、糸が手に入ったからそれをどのように布まで発展させていくかというアプローチの二つがあろうかと思う。ほかにも、シャトル織機で面白いものをとなればシャトル織機の可能性をテーマに、糸を選んで織りを決め織り上がった生機をみて加工を決める。

あと、依頼主の希望ということもある。こんな生地がほしいといわれるときに、それに近いイメージが頭にわいたときにはそれを生地にしようとする。倉庫で近い生地を探して、同じ生地はつくるのは難しいのでそれに近づこうとする。

自由に好きな生地をクリエーションなんていうのはナンセンス。いろいろな出会いをうまく生かすのがものづくり。
2014年04月20日
近江上布が上布といわれる理由には、たぶん、糸からして違いがあったのだろうと思う。近江湖当地域の特色的な織物ということで赤苧織物があったとされるが、それが答えではなかろうか。宮古上布も高級なものは赤苧であったという話もある。赤苧というのはそれほど織物としては希少だったのだろう。

2014年04月19日
プレミアムテキスタイルジャパンも近づき、業界紙の方が取材にこられるタイミング。今年の場合はポイントがハッキリとしているので、分かりやすい。リネンの細番手素材に近江上布プリント柄を載せた生地をお披露目。

いつもの林与らしい雰囲気を保ちたい気持ちもあるのだけど、今回は少し、カラーが変わるかもしれない。アパレルの時代の林与のものづくりの前の時代、着物の時代に林与の近江上布がもっていた独特な色合いを布の上にプリントで再現する。

なぜ昔の色に固執するのか、結論から言えば売れなくてもいい。そのままの色で布が語りかける人との出会いを捜したい。ある展示会で、ロンドンの生地屋さんが近江上布のハギレを展示しているのをみて興奮された。ヨーロッパのデザイナーの方が日本の着物の生地に興味を示されるケースは多い、文化が違うのに言語の本質は共通であるのと似ている。

私は布をみると、布を作った人の人生観みたいなものを感じる。今とは人々の生き方、考え方がまったく違ったのだろうと察するのだ。近江上布のハギレをみて和むという方が多いが、たぶん、子供の頃におばあさんと一緒に着物を見たとかそんな良い思い出が蘇っておられるのだろう。
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