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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2013年05月01日
5月は、私の誕生日の月です。アメリカに留学してから年と言うものをほとんど気にしなくなって、いつも年齢を書かないといけないときには、昭和44年生まれだと周りの人に正しい年齢を確認します。

5年ほど前に、軽自動車に社員4人を載せて買い物にいったときに、定員オーバーというのも知らず、パトカーに止められましたが自分の年齢を警察官に尋ねてしまったがために家にまで警察が電話して私の年齢を確認をしましたが、そのとき、父親が出て、警察の「息子さんは何歳ですか」という質問に父親も「分からん」と正直に答えたようで電話された警察官の方が困っておられましたが、林与なんて何月何日とか何曜日も忘れるくらいにテレビも一切見ることなく仕事をしているのでそんなものです。

日本というのは年齢の1歳の違いが大きかったりするので、年齢を気にしないライフスタイルというものもあってもよいのではないかと思うところです。実は日本の昔というのは年齢よりも本人の力量が大事だった時代で、出来る年下のものが抜擢されることが多かったものです。戦後は、ステレオタイプな人生が敷かれ年功序列型に固定されてしまって、大人であっても誰かが食べさせてくれる生活が当たり前になりましたが、大人が自分で食べていけないという状態が長続きするはずもなく、そろそろ日本もいろいろな国に追い越されて終わりかなあという局面。

戦前なんて死ぬまで現役が当たり前、70なっても80なっても、畑を耕すようなおじいさんおばあさんが当たり前でした。それって、今の時代の30代、40代でも逃げてしまうような力仕事。年齢というものに縛られて、できることもできない気分になってしまうというのも情けない話。
2013年04月30日
今日はセントレアで見送りです。セントレアの駐車場はゴールデンウィークだけあって、満杯状態で臨時駐車場への駐車となりましたが、実際に空港の中に入ってみると、便のコードを重複させてたくさんの便が飛んでいるかのように見えても、実際は一時間に2便あるのかないのかという状況。

関空にしろセントレアにしろ、アクセスの難しさという交通機関としての致命的な問題を抱えており、無理と不便にするあたり利用者も少なくなり維持も難しくなるばかりだろうと思います。空港に行くこと自体が不便で半分くらいの利便性に落ち着いてしまっているのではないかと思えるのです。

どこの国の空港も保安の面などから搭乗口までの距離など長くしてわざと不便に作ってあるところもあろうかとは思いますが、空港といえども見えない競争には晒されているものなので便利な空港でなければ競争には負けてしまうものです。

本来はプラスのものならプラスの蓄積が生まれますが、マイナスのものを抱えてそれを支えるとなると、ほかの切り詰めた部分から助けないとならないようなアンバランスで、国単位での自由競争を想定すると「贅沢な子」を抱えた国というのはそれを補うためにまともな力を無駄に費やさないと駄目になろうかといえます。

空港行くのに外国に行くのと同じくらいに時間も掛かって大変なのそろそろ止めませんか。日本にエコノミストがいくらいてもこれほどまでにミクロ的なことを考えるばかりで、マクロで国の経済を考えるとかしないと何億円もの莫大なお金をかけてつくる法律や制度、また、法律や制度を作ってまで作るものやサービスすらも短絡過ぎて国の将来にとってマイナスのものが多いです。

原発でもハリボテの保安院が浮き彫りになり、電力会社のトップたちにしても、人の命や環境に関わる問題すらもがその人たちの保身や数円の利益と天秤に掛けられ犠牲にされるというのが実情。それならそれで実質的には利益優先主義そのものなのですから、お金のための原発ということで、チェルノブイリの何分の一規模の環境破壊につながっても継続の本質、最初から環境など綺麗ごと謳う必要なかろうかと思います。
2013年04月29日
今日は昭和の日、祭日なので電話も少なく、落ち着いての作業。できていないことをひとつづつ順番にこなして行きます。こなすスピードよりも依頼をいただくスピードのほうが速いことのほうが多いもの。

ものづくりできる環境を持っていることは恵まれていることであって、それがゆえに、普通のお店のように「ある、ない」の答えですまないところがあって、「できる、できない」の話になることも多いのです。

タイミングさえ会えば出来る、タイミングが合わなければ出来ない、というような話は、林与自身の問題以外に、染色工場さんや加工工場さんとのタイミング、また、生産の流れの中で、流れているものに乗ることができれば、できても、それだけを数メートル作るとなると十数倍のコストがかかってしまいます。

夜に生地を探しに倉庫に行きました。倉庫の中には何十年も昔に作った生地が眠っているのですが、こういう生地はできる限り眠らせておくことがよいんじゃあないのかと思います。日本が世界の中で一番に輝いた昭和の時代のものづくり、平成の時代のものづくりとは違う価値観が詰まっている気がします。
2013年04月28日
昨日のお客さんと話をしている中で、麻の歴史で、なぜ、近江上布の特色の一つである赤苧が麻織物の歴史でクローズアップされないのかは本当に不思議なのです。鎌倉時代といわれる奈良晒の起源にしても近江上布の細番手にしても、もしかすると奈良の寺領であった東円堂にあったりするのではなかろうかとも思うのです。もちろん、東円堂で作られた米や織られた織物も奈良のお寺に納めたものと考えています。

それ以前は、大国荘は依智秦氏が開拓した地域で、それは徐福の子孫の存在を思わせるのです。また、近江湖東地域というのは関西でも一番くらいに社寺信仰が強い地域だとされ、渡来文化の強い影響の名残りだと考えられます。林という姓にしても、麻を意味し、また、徐福の四男である徐林の名残の可能性も高く、秦の始皇帝の追跡を逃れるために徐という姓を消すことは非常に大事だったことは考えられます。

赤苧から繊維を取ることは大麻や青苧から繊維をとることよりも格段に難しいとされていて、現代では再現が不可能に近いものではあります。それが近江上布の一つの特色であり、他産地の麻織物よりも高級な域に達していた理由ではなかったかと思うのです。

林与に眠る1トンほどの手績糸が、青苧なのか赤苧なのかは、一度分析が必要かと思うのですが、昭和27年あたりの紡績時代の紙に包まれ、使われずにおじいさんが保存したことからしても、戦後は、手績糸が手に入らないといわれていたので、江戸時代や近江上布本来のものづくりを残そうと林与の先先代が動いて残そうと動いていたものと思います。

新聞紙に包まれて、箱に密閉に近い状態で保管されており、糊付された状態なので劣化も少なく、一束取り出して事務所で5年ほど放置してありますが、非常にしっかりとしていて、強度にしてもとことん強くよい感じです。それが戦後麻織物が解禁されたといわれる昭和27年以前の原料とは思えないのは誰もが驚くところです。

私のおじいさんが戦争が始まるということで、もう良い糸が手に入らなくなるというのを予測して、買えるだけの手績の糸を買ったのではなかろうかと思っております。そして、戦後の解禁された昭和27年に糊付けを行い、糊付後も60年近く、今まで完璧に近い状態で保管されているというのが私の推測です。

おじいさんの考え方というのは、亡くなる直前のオイルショックの前触れを察知して、よい材料が手に入らなくなるということで、花王のマルセル石鹸を何百キロも買ったりしたりで、ものづくりを本当に大事に考えるタイプでした。今も、40年ほど昔の花王のマルセル石鹸、林与では手を洗ったりするのに使っています。
2013年04月27日
今日は3日ぶりに会社に戻って、留守中にいただいていたご注文の在庫確認など。ゴールデンウィークに入っているので、電話もほとんどなく静かです。お昼には、近くの台湾料理のお店に行って、そのついでに秦荘マーガレットステーションに寄りました。ちょうど、一人パフォーマー的な大道芸の方がパフォーマンスをやっておられました。

5個のボールを操ったり、バランス台など。大変だなあと思ったのは、自分ひとりで演技の説明もされながら、音楽のボリュームもコントロールしたり、自営業的なパフォーマンスなのです。なんとパフォーマンス時間はたった10分ほどですが凝縮されていて良かったです。

大道芸師に憧れる人、しかも自分で技を磨くようなタイプの人というのは、お若いのに、子供たちに夢を与えたいような夢のある方だなあと思いました。芸そのものよりも、その姿勢の美しさみたいなものに応援したい気分になります。大道芸人の厳しさは、自分で食べていかねばならないところで、見て楽しむことに代金が約束されていない形だと食べていくのも大変だろうなあと思えます。それでも、アルバイトしながらでも、お客さんの多い週末にパフォーマンスするなど、サーカスと比べると食べていきやすいのではなかろうかと思います。そういうスタイルって強いと思うのです。

夕方は、お客さんでした。麻の歴史的な話をしていると、麻織物の歴史というものが非常に不鮮明であることを感じます。それというのは、不鮮明にするための要素がやはり働いていたものと思えます。同時に産地での工場の廃業のお話を聞いて、強い技術を持っておられるところでも高齢になられると次につないでいくことの難しさを感じます。
2013年04月26日
日本の方の多くが知っておられないのが、中国という国の現在の状況です。いまや中国の中級地方都市でも東京以上に高層ビルが立ち並んでいます。中国はいまやアメリカを抜くようなインフラの整備が完了し、高速道路なんかも当たり前に日本の高速道路以上の規模で中国全土を走っています。世界中の資本が中国に集中した結果ではあります。

中国は、ドル連動型を保ち、変動相場制に移行しなかったことが、基軸通貨のドルが弱くなればなるほど中国経済が楽になるというのが、経済発展の最大の理由にあたるかと思います。これは、物価が異なるときに、物価の低い国から高い国に物が流れ続けるという購買力平価の原理を最大限に活用できるもので、作れば売れなくて損の国と作れば売れて儲かる国を作り出します。最初は小さくても、規模が大きくなるほど規模の経済も働き、どんどんと加速していくものです。アメリカは国内製造をやめ中国での生産に移行せざるおえないでしょう。アメリカの商品が売れなくなるとアメリカ経済が悪い状態でドル安をもたらしますが、それが中国経済がよい状態で元安に結びつくので、加速度的な経済発展につながります。

日本の経済発展の場合、変動相場制以後は本質的に止って、それを金融の緩和でバブル経済に誘導し見せかけの好景気を作り出しました。将来中国元が変動相場制への移行で起こる可能性も高いですが、それが起こらなければ、基軸通貨であるドルが弱くなればなるほどに中国経済が発展することになります。日本が基軸通貨であるドルを守ろうとすれば同時に中国元を守ることになるので、日米の貿易摩擦を解消しようと円高誘導すれば、アメリカの商品と中国の商品が同時に日本国内に流れやすくなるという効果をもたらします。

中国が、このわずか20年で世界中の資本を集めることが出来たのも、このようなメカニズムがはたらいたからであろうと思いますが、国の経済というのは政治と連動しているので、日本経済が立ち直るようなことも政治がこのままだと不可能に近いんじゃあないかと思います。国の政策というものは、為替とすらも関係のない、国内でものづくりしているものにも大きく影響を与えるもので逆風のトラップ、抜け出すことは難しいでしょうし、政治の方向性からしても逆風は強まるばかりだろうと思います。
2013年04月25日
今日は、中国では記念日なのでしょうか?ホテルにいると近くで花火の音が聞こえます。通訳のものに尋ねると、中国の花火というのは個人が打ち上げるとのことで、日本の花火大会の半分くらいの規模のものを個人がボンボンと打ち上げたりするのが当たり前ということです。結婚式があったのか、あるいは、お店の新規オープンなのか、誕生日なのか。

しかも、ビルが密集する街中の公園で打ち上げてしまうので、やりすぎじゃあないのかと思えます。夜、10時を過ぎていても花火をまだ上げていて、警察なんかもそれを止めようとはしないので許容範囲なのだと思います。

中国の家が石で出来ているというのは、火事を防ぐ効果もあろうかと思います。日本の家というのは木で出来ているので火事が起こりやすく、火の用心の文化が根強くあって、そういう用心深さが日本人の品質意識にも結びついている気がせんでもありません。台所に火の神様の文化も、木の文化と強く結びついているものと思います。

日本の文化で大事だったのは、火鉢の文化や蚊取線香、今ではすごいなあと思えるアンカの文化。燃えやすい布団の中に火のついたもの封印して持ち込むというリスクも覚悟で暖を取っていたというのがほんの40年ほどの前の日本。
2013年04月24日
今日から上海です。今日は上海の高級カジュアルブランドの事務所にお邪魔しました。ブランド兼オーナーのデザイナーさんと、通訳兼PR担当の方、ならびにアシスタントの方との打ち合わせ。

打ち合わせの前に、ショウルームを見せていただいてブランドさんに流れる嗜好的な部分が、やはり素材の選択にあるのだろうなあと思いました。ブランドの立ち上がりから10年数年ほどで中国全土に100店舗ほどになっておられ、急激なスピードで成功を納められて。ブランドを立ち上げられたときのコンセプトが流れ続けているのがよいところなのではなかろうかと思うのです。

インターテキスタイル上海でも、そのブランドさんの若いデザイナーさんたちも毎年林与のブースに来てくださって、昨年サンプルとして買ってもらったストールを首に巻いて来てくださるなどもビジネス以外の部分で特別の意味をもって、接して下さっているのにありがたさを感じます。
2013年04月18日
才能というものが一番表れるものに絵画の世界があるのでしょうが、私の場合は、書いているうちに絵らしくなっていくくらいで、頭の中に絵が浮かびませんので駄目かもしれません。

ミルツルさんから新作展のご案内状をいただきまして、案内状にあった「つばめダンサーズ」というテキスタイル、かわいいです。弊社の生地をベースに刺繍を載せた生地だということで今度見せてもらえるのが楽しみです。それにはすごく才能を感じたのです。布が人々を幸せな気分にさせるというのはいいですね。手の落書きっぽい味のあるもののほうが面白く思える。

織物も頭に織柄が浮かぶタイプの人というのもあるでしょうし、単に織物というだけでなく洋服にしたときにどのようなイメージになるのかまで瞬時に頭の中で描けるひともあります。デザインというのは、実際にはスタイルの問題なので、どんなデザインが良いというのは美人投票みたいなもので、時代にもよりますし人にもよろうかと思います。

売れる柄を狙うなら柄を組んだりしないほうが良いのです。日本の場合は、まず、シンプルな白無地で風合い勝負、次に、ベージュ、紺、黒などのベーシックカラー。こういう傾向というのは店頭では特に大事。クリエイティブなデザインのものを創造するのがデザイナーの仕事であるように思いますが、商売を考えるとベーシックな柄で攻めるのが王道であることが多いものです。
2013年04月15日
今日は午後から長浜にある東北部工業技術センターに行き、試料の分析を行ってもらいました。生地がコットンなのかリネンなのかという分析です。顕微鏡で見るとコットンの場合にはリボンがひねれたような形状をしていてリネンは糸が丸くストレートです。

普通では糸の一つの織目すらも数えるのは大変ですが、顕微鏡を使うと、10000倍くらいに拡大されているでしょうか、糸を構成する繊維の一本一本ひねれた状態までもモニターに綺麗に映し出されます。

顕微鏡というのは大きく見えても万能ではないというのは、光の屈折を利用して拡大しているので、焦点距離というのがあるために、ひねれている一本の糸でも同じ距離にないとくっきりと見える部分とくっきりと見えない部分があります。

コットンもリネンもセルローズ繊維と呼ばれ、原料は同じで外観が異なるみたいなものですが、見た目の光沢観や風合いなんかも変わってきます。コットンがマットな感じに見えるのは、一本の繊維が扁平気味で、屈折しているから、光がコットンの繊維には均一にあたりにくいということになろうかと思います。
2013年04月13日
今日は細かい作業が必要なことがあって、お友達の電子部品製造工場に拡大鏡を貸して貰うことにしました。この工場というのも、実は英語関連で奥さんとお知り合いだったのですが、ご主人が工場を経営されているということで分野は違えども参考にさせていただくところが多く、才覚を感じるものづくり。半田付けでは世界屈指の技術をもたれています。

大きな製造工場というのは設備依存で人の技術や作業が伴わないことが多いのです。製鉄でも今の製鉄技術よりも2000年昔の渡来人が日本の鉱資源と結びついて発展させた「たらら製鉄」のほうが何十倍も技術が上というのも面白いものですが、当たり前といえば当たり前。製鉄技術にしても最高峰のものを考えると一番最初の技術に戻ってしまうというのが面白いところです。織物の世界も同じで、エジプトのミイラのリネン布が今の時代の布を超えているというのも同じです。製鉄技術にしても織物技術にしても2000年昔の技術を今の技術が超えるのかというと、人の要素が一番大事ですので、その面で、超えることはないと思います。

小さな工場というのは、人の力が命だなあと今日も社長ご夫妻とお話をしていて思いました。
2013年04月12日
今、ある生地開発に伴いリネンの伸縮の問題を考えています。よく、お客様からリネンの通しが必要ですかといわれます。一般的に市販されているリネンというのは水通しすると縮む傾向にあるかと思います。なぜ、リネンが縮むのかというと、それは引っ張り出して仮に幅を出しているからです。イメージからしますと引っ張りながらアイロンを掛けた上体というのが、市販されているリネンの一般的な状態です。

そのためリネンショップでは使用する前に水通ししてくださいという表記が良くされています。水通しすると、仮に幅を出していたものが解け、生地がリラックスした状態になり、それをまた乾かすと通常は縮むのです。時折ですが、縦に引っ張って加工したリネンというのは横が入っている傾向にあるので、水通しすると幅が広がるようなこともあったりします。横に引っ張り出しすぎると縦が縮んだ状態なので、生地が伸びるということです。仕上げのときに横を引っ張り出しすぎると縦が詰まっている状態なので、水通しすると縦伸びすることになります。

収縮検査というのは、絶対的なものにとらわれがちなのですが、一般に水通ししてそのまま乾かすと収縮物性は極端に改善をいたします。加工工場の方も、こういう理屈をご存じないケースが多く、生地を同じに織って投入をしても、加工時の布に掛かるテンションで物性というものは揺れ動くものなのです。

また、検査機関の方もご存じないのですが、検査に使う試料というのは一番端を落とすことが多いので一番物性が不安定を検査していることが多く、最初から物性の悪いところを検査しているので検査に引かかるのも当たり前のようなことも多いのです。
2013年04月11日
今朝、東京から帰り、午後からは京都からお客様でした。今回の東京は、非常に充実していました。いつもの展示会での印象と違う印象を受けたのが今回の東京でした。展示会は力任せのスケジュールで行くことが多いのですが、今回は、詰め込みながらもそれなりの計画を持って動けました。

動くのはものなのですが、そのものを動かすために大きな設備空間が必要だったり、お店が必要だったり、人がたくさん必要だったり、して、一つのものに人が出会うということになります。一般にものづくりという話になると、ものをつくることに主点が置かれますが、小さなものをつくる以上に大変な部分はどうするのですか?というところから始まるのです。

物だけが単に出来上がることはなく、物が出来上がると同時に、人々に仕事が生まれ、より大掛かりな設備や、文化や人の流れも出来上がってくるものです。また、ものづくりというものは新しいものを捜しがちですが、蓄積されたものを生かすような動きから新しいものを生み出すほうが真似のしにくい世界だったりします。

そういう中で、文化に広がりができるもので発展もありえるのだといえます。時々、宇宙というものを考えます。宇宙の果てがあるのかを考えるときに、宇宙というのも無限ではないだろうと思うのです。発展というものも元に戻るような限られた空間の中で作り上げていくものであるのが自然じゃないかと思います。
2013年04月10日
今朝は、東京、新宿伊勢丹さんのリビング雑貨コーナーを見学、林与のリネン生地を使ったエプロンをコーナーに展示いただいていて、これからリネンの季節、他のプリント生地などに負けないくらいに素材感が出ていました。

午後には表参道のお店を覗いて、渋谷のお店に立ち寄り、夕暮れに二子多摩川のリネンバードさん。今回はリネンバードさんの10周年ということでお伺いすることがきっかけになりました。リネンバードさんというとリベコさんの生地がほとんどなのですが、このイベントのタイミングに合わせて林与がシャトルで小幅に織らせていただいた生地もお店で扱って下さってます。10周年の鳥をデザインしたオリジナル生地も見せていただき、デザインされた方にお話伺いました。

夜、レンタカーを返す前にアポを取って工房さんに立ち寄りました。職人さんたちが帰られたあと、外のデザイナーの方が作業をしておられ、自分自身の作品を自分で仕上げる姿勢というのは理想的で美しい。工場も戦後のレトロで、林与が失ってしまった世界、作業現場も味のあるまま残したほうが良いというのが、昔の作業現場の建物を片付けてしまった林与の感じるところ。

作業環境というのはものづくりする上で大事だなあと思うのです。作業現場にしても恵まれたものを求めようとするとできないことが増えてしまう。あるものを造るときに作られた道具など必要なくなっても、そういう道具や材料などが捨てられずに残っているのと残っていないのとでは大きな違いです。

今の時代、自分で道具や機械を作って、ものを造ろうとする人というのは少ないものですがそういうのって本当に大事。ものをつくるときにものを造る道具から自分で造ったり、修理したり。林与も昔の倉庫の道具を見ていても、おじいさんが自分でつくったり、鍛冶屋や大工さんに指図して造ってもらったものがほとんど。自分でものを考案して造っていくというところ、日本の織物の文化の形成と深く関わっています。
2013年04月09日
今日は、海外輸出の生地の出荷、神戸の保税倉庫に搬入する途中、税関の想定価格よりも高いということで理由が必要とのこと。長期的に続いた円高のトレンドの中で海外のバルク向けにドル建て価格を落としてはいるが、通常の3倍重い超厚織タイプで、使う糸だけでも織る前の段階で普通の生地の値段を超えてしまっている。値段も正直なところなので高く思われてもどうしようもない。

午後に会社に戻って、今月、来月の出張や展示会の飛行機やホテルを段取り、今日の夜出発する東京行きも、午前、午後、夜と、いつもなら展示会だけでとんぼ返りが多いので、今回は比較的じっくりと予定を組んでの東京。訪問先も駅から離れているところもあるので東京でレンタカーを借りて回ってみようと思う。新しいことを試してみるのは楽しい。
2013年04月08日
今日は夕方加工工場の社長さんがキッチンクロスを探しに来て下さり、いろいろと加工のことを尋ねてみる。昔の反物を引っ張り出して、同様の加工ができないのかとか、私自身が良いと思うイメージのものを生み出せればと思うところ。

技術的なものに関しての相談なども最大限の柔軟性での対応で、私自身の中で煮詰めてきた加工がバルクのものとしても実現が可能になりそう。展示会でもリネン関連のトレンドとしてエコやナチュラルなものを林与の主流としてご覧いただいて、そういうのも海外で非常に好評で、トレンドとして出来上がり整合性が増してきた気がする。

林与の特徴的な両極、超細番手ガーゼ+ナチュラルと、超高密度HD+ナチュラル。織の技術でプレーンな平織ながら新しい感覚を引き出す。そこに、リネンらしい素材の良さが出たり。日本の麻織物がどんどんと綺麗に進化した後に、たどり着くのは、廃墟の美学的な、木の文化を思わせるワビ、サビ、味の世界。高級ブランドには厳しいところありますが、高級ブランドのデザイナーの方なども自分のブランドのテイストとは違っても、普通の綺麗に仕上げたものより、リネンの表情としては良い感じだとおっしゃって下さる方が多いのも事実です。

ブームとしてのものではなく、本質的なものの良さを打ち出したいと思う。今年はアイリッシュリネン140番手の風合いを目指した、リネン150番手ストールのシリーズを拡充する。リネン25番手HDシリーズの拡張的な、厚織のリネンのシリーズも新たな顔の生地が誕生。後ろでいろいろと試してできた、自分の良い感じのものを販売できるように生産することなんですが、試作で満足して皆さんに見てもらっているうちにどっかに行ってしまったみたいなこともよくあります。
2013年04月07日
見本つくりに莫大なお金が掛かることは、業界におられる方でも、川上、川下含めて、ご存じないケースがほとんどです。ずいぶん昔のことで、2週間ほど掛かって20柄くらいの柄と色を掛け合わせた、100mほどの枡見本で、見本代を払って本番の単価を落としたいといわれて、7万円を請求させていただいたことがあって憤慨されたことがありました。

それは見本を織るために働いた職人さんの織る分の2週間の人件費の半分程度。織る人件費のほか、糸のお金、糸の染代、整経、ドビーカード代、加工代と、他に払う分を足すだけでも25万円ほどの直接的コスト。間接的な僅かは省いて見本なので私自身が無料の想定としても掛かるだけで大きな費用です。なぜ、ものが作れ流れるのかというと当たり前にそういう費用を認識して負担して動いて、そういうのを理解することは難しいだろうというのも分かっているからで説明もなるべくしないようにして伏せていますが、何分の1かの費用であっても大きいと思われるほどの大きな費用は当たり前に存在し、人や技術を養う経営者感覚的でないと新しいものを作ってその費用を回収するというのはアンタッチャブルな世界に思えるかもしれません。

見本をつくる工程の中では売り手と買い手のお金の流れも実質逆転していることがほとんどで、そのときにお金の流れは伴わなくてもそのあたりが理解できている循環の中にいるとトータルでの成長というのもありえましょうが、それが理解できていない流れの中だとどんなに良い物を作っても逆にどんどんと収縮する循環の中にいることになります。

カードをパンチしたり糸を準備したり規格の密度決定、再現性のためのすべての糸の準備とノート1冊の半分ほどのデータ記録を管理していますが、自分が無料で働いたとしても、新しくものをつくるというのは持ち出しでお金のかかるものなのです。そういう意味で、働いてお金を払うということが常識なのが経営者的な考えなのだろうなあと思うこと良くあります。経営者的に、お金の動きを抑えたければ、リスクを張るとか、とことん自分で時間を費やすとかしかないものです。

それをしないと新しい形のものが見えてこない場合が多いので、必須のものではあるのですが見本をつくるということは、まさにマイナスの仕事なのです。林与にある10数メートルから1反ほどの見本で作ったいろいろな反物というのは損の積み重ねで、作り続けている部分があるので、そういうのが生地を作る上での財産なのです。好意的に残布の処理のお手伝いを考えてくださる方も多いのですが、見本布の価値というのは通常の布の何倍ものコストを掛けた分の価値を持っているものです。

今の時代、商売は、リスク回避が仕事になりがちで、同じ年月を使っても大きなことはできず。昔の商人のように自らの命を掛けて行商に出るのがあたりまえ、自分の歩む道が平坦であるよりも険しいものを良しとするのとは対極的。近江商人の三方善のような理想を支えようとするとその自分に対する厳しさがなければ、三方善すらも三方偽善に終わります。

繊維の世界では、大手のSPAが、リスクを覚悟で海外でものづくり、それはそれで天晴れなことだと思います。そろそろ、日本国内でも大学卒業したような恵まれた人たちが集まって、そういう満足に教育も受けることのできないといわれる国の人たちのものづくりに負けないものづくりを考えてみてはどうかと思うのです。人のスケールの問題にしても、日本人と外国人と立場が逆転していること多くなってきて、日本ではものが作れないというのも現実的な話になってきました。

海外から新規参入されて競争を挑まれていて、日本的な高コスト体質や為替の問題などあって同じレベルで仕事をしていたら勝てるはずもなく、単純に3倍どころでなく10倍の仕事が要求されますが、同じレベル未満の仕事であると成長も見込めず負けは必至です。まだ、言葉や国境という壁に救われているだけ、国内でも、繊維の産業も共栄共存が成り立つように考えていくべきではなかろうかと思うのです。
2013年04月06日
朝から、テレビニュースを見た70過ぎの母親が、今日は台風みたいな風と雨がくるので、会社周辺をそれに備え片付けようとしています。仕事のほうが詰まりきっていてそんなところに頭が働いたことがなく、そんなのは気にするほどのことじゃあないからというのが、一年に10回くらいはあるでしょうか。

昨日は徹夜に近い状態で、お昼過ぎまで作業を積み重ね。春の暖かさの中で全身脱力感に襲われ、3時間ほどの睡眠で回復し、そういうところから通常の状態に戻ったときに、すごく元気に仕事ができるものです。

カリフォルニアに居たときのクラスメートから今年の冬は久しぶりに一緒に長野でスキーをしよう連絡がありました。そのクラスメートもパワフルな人生、半導体製造メーカーの執行役員ながらも相部屋で泊まるスキーツアーで友達を見つけ日本に来るタイプで、山があれば山に上りたいタイプのアメリカ時代からの親友の一人。頭じゃない行動力やハート的なものがいい感じなのです。

日本のスキー場も昔と違って、スキーブームも去ってしまい、海外からの観光客に支えられているというのは、どうやったら昔のようなブームをブームで終わらせることなく、今も同じようにやっていけたのだろうと方法を考えるところ、ブームをつくるでなく、ブームをつくらないことも最良の経営手法の一つだろうと思います。
2013年04月05日
今日は、午前中、東京から糸関係のお客様。林与が何年か掛けて本腰を入れて取り組めそうなプロジェクトの種を植えにきてくださいました。非常に特殊なものなので、やるからにはやるで思い切ってやってみるのが、楽しい。

連日、非常にポイントを絞ったお客様が続き、具体的に何をつくるのかという話が進んで行きます。ものづくりしていると問題なんかもいろいろと起こるとういのは、サンプルなんか作っていると当たり前のことで、今回の新しいプロジェクトもいろいろな問題と遭遇するのだろうなあと楽しみなところです。

夜は、がんばって織ってますが、なかなか安定して織るということが難しい。デゥーレッティングとウォーターレッティングの差というものは、明らかなる織りあがりの風合いの違いに出てきており、ウォーターレッティングで苦戦中。

そのほか、変則組織の織物を巻き戻して織ってみたり、なんか、織っているものはほんと少ないですが、できるできないということの壁を無理やり越えてのモノづくりが多く、一日に何十倍もの重みを感じます。どう考えても織れないと思っていたものが、覚悟の深い一日の仕事で解決方法が生み出され織れて行く、これって、時間が戻るような感覚に陥ります。
2013年04月04日
今日は午後から滋賀県で機能性糸を手がけておられるお客様。麻織物と掛け合わせての開発となりますが、普段の麻織物の世界とは別の切り口になりそうです。いろいろなアイテムに応用ができるのではなかろうかと試織と並行して用途の模索に入ります。

今、今年の春のものづくりの最後の追い込みに入っています。仕事がピークを過ぎるのですが、やはり最後まで残る仕事というのは難しい仕事が多いもので、仕事の量は減っても質的には負荷が大きいこと多いのです。まあ、丁度仕事量が減って最後の締めくくりに時間を使えるので悪くはないのですが…。

人を抱えてする作業が少ない会社というのは気の毒に思います。経営が苦しいだろうに見えるから気の毒というのではなく、会社に来てもする仕事がないので、それを続けていると、働く人の能力というものが落ちていくのです。仕事がなくても給料がもらえるのが当たり前みたいな、最後には、給料を貰っていても仕事をするのが苦痛になる。

仕事があると嬉しくないとならないはずなのですが、逆の心理に陥ってしまいがちなもの。忙しくなったとしても、仕事の出来る人というのは常に仕事に溢れていて、仕事の出来ない人というのは常にできる仕事がないというような両極に分かれることになります。仕事のないときに仕事を生み出す能力を持たないとそのときに仕事がないというだけでなく仕事があっても仕事ができない体質に陥ってしまいます。
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